ミネイワールド

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毒は斯くありき(プロット3)

毒は斯くありき(プロット1) - あれも欲しいしこれも欲しい

毒は斯くありき(プロット2) - あれも欲しいしこれも欲しい

 

十月半ばを過ぎ、日中でもかなり過ごしやすくなった。夏、竹下芳乃との一件以来、健は安曇野教授の著書を読み耽けっている。後期授業では、安曇野教授が所属する学科ではないにもかかわらず講義を受講している。

 バドミントンサークルで相変わらずペアを組んでいる健と真二は、芳乃を話題にしながらシャトルを打ち合っている。

「竹下は、つまり、健とどういう関係なの?」

普段の簡潔さを感じない歯切れの悪さに、健は笑いながら応えた。

「別に、友達だよ。少し学面で気が合ってるだけだ」

「授業、ほとんど一緒なのに?」

「気が合うだけだよ」

「好きなんじゃないの?」

「今日はよくしゃべるな」

健と真二は中学校から同じ道を進んでいる。染谷家と小林家の親交も深く、親同士での情報交換は当たり前に行われている。

「おばさんに頼まれてるからだよ」

バツが悪そうに、真二が口を開く。

「断ってもいいんだぞ」

 

 ダイニングバーで二杯だけ飲み、健と真二は帰路についた。体育館で苦言を呈したためか、バーでその話題が上がることはなかった。

 じゃ、またな、と健は真二に告げ、学生アパートのエントランスに入った。築十五年、家賃四万八千円と、周辺の学生アパートの中では立派な方だ。

 扉を開くと、部屋の奥の方で芳乃がヘッドホンを着け横になっている姿が見えた。

 またか、と健はため息をつく。合鍵なんて渡すんじゃなかったと考え、同時に、合鍵を渡すことによって得られた幸せを想起し、自己嫌悪に陥った。

 

 健は芳乃に近づき、小さな声で名前を呼んだ。起きる気配はない。

 また睡眠薬に頼ったな、と健は察した。小さな体をベッドに運び、自身もその隣で横になった。

 竹下芳乃の両腕・両脚には傷跡があった。リストカットのようなもので、腕や脚にも衝動的に傷をつけてしまうそうだ。その傷跡を見た翌日、健は部屋の鍵を渡した。辛くなったらいつでも来いと優しい言葉をかけながら。